子供虐待のニュースが後を絶たない。子供を守る最前線にいるはずの児童相談所が、なぜか及び腰で、虐待の事実を掴んでいながら悲劇を未然に防げないのがとても残念だ。6日付の朝日新聞家庭面の記事によれば、今年1月、岡山県倉敷市で4歳の子供の喉に七味唐辛子を詰め込んで窒息死させた母親が逮捕された。事件の前から、虐待を受けている子供の姿が何度も目撃されていた。倉敷児童相談所でも事実を把握しており、事件の3年前には病院からの通報を受けて、亡くなった児童とその兄を一時保護したこともあるという。さらにこの4歳の子供が亡くなる8日前には、母親がこの児童の首を絞めたと話していたとの幼稚園からの通報で、翌日家庭訪問している。母子が不在だったので、さらに翌日母親に面談した。しかし、子供の様子は見ずに母親の言葉だけから、直ちに保護しなければならない状況ではない、と判断して結局そのままとなり、子供が亡くなった。
児童相談所を管轄する岡山子育て支援課長は、親との関係がこじれると子供の家庭復帰が難しくなるので、対応が消極的になってしまった、と語ったそうだが、ここに児童相談所の限界が見える。記事では、さらに千葉県松戸市で今年発生した児童虐待死の例を紹介していた。これも児童相談所が昨年末に児童を一時保護していながら、家庭に戻した後に事件となった。亡くなる5日前に家庭訪問していたのだという。このふたつの例は、いずれも県が有識者に委託して検証作業を行った。その結果、松戸市の例は検証中だが倉敷の場合は、担当者が児童の安全確認を怠り、保護を十分に検討しなかったなど児童相談所の対応不足が指摘されたというのだ。しかし、事態を整理してみれば、何も有識者に検証を依頼せずとも何が原因かはすでに明らかだ。こんな疑問が沸いていくる。
・倉敷の場合は、兄弟揃って虐待を受けていた。3年前には、亡くなった児童の兄
は一時保護されたが、今回亡くなった弟は「傷の状況が兄ほどではないので」一
時家庭に戻している。
傷が大きくなければ、保護されないのか? 年端もいかない子供は、傷が大きけ
れば死ぬ危険があることを児童相談所は認識していないのだろうか。
・子供を虐待する親が聞き取りに対して正直に答えると思っているのだろうか。
真実は子供をつぶさに観察することでしか得られない。しかも当の被害者である
子供は、状況によっては真実を語れないこともある。
真実を掬い取る見識眼が必要。
・親との関係がこじれないようにすることと、子供の安全を守ることと、どちら
が優先すべきことなのかを児童相談所はわかっているのか。
実は親との関係で児童相談書が心配しているのは、対子供ではなく、対役所なの
ではないか。
事態を穏便に済まそうとしていないか。言い換えれば傷害事件あるいは致死事件
の被疑者に向かい合っているのだと認識があるのだろうか。この点では、警察の
ある程度の介入も視野に入れるべきだと思うが、関係省庁の見解はどうなのか。
・厚生労働省によれば、05年の児童の死亡例56人の内、2割は生前に児童相談
所が関与していたという。この詳細な内容をすべて明らかにすべきである。11
人は死なずにすんだかもしれないのだ。
これらの追及取材をどのメディアが取り上げるのだろうか。