メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

またもやマスコミのマッチポンプ

 メディア、特にTVのマッチポンプ体質は、ホリエモンライブドア事件を待つまでもなく昔から指摘されてきたことだ。そしてまたもやの事件が起こった。先週木曜日、11日のWBC世界フライ級タイトルマッチで、チャンピオン内藤大助選手に挑戦した亀田3兄弟の次男坊・大毅選手が悪質な反則を犯したとされた問題だ。週明けの今週月曜日に日本ボクシングコミッションJBC)の倫理委員会が処分を発表すると、各メディアはいっせいに亀田バッシングをはじめた。当人だけでなく、中継したTBSTVまでも非難の対象となる始末だ。確かにビデオを見る限り、特に最終ラウンドの抱え投げは、とんでもない反則である。しかし、大毅選手はもうひとつの反則と合わせて、このラウンドだけでボクシングの国際試合では非常に珍しい3点もの減点を課せられたのだから、当然の報いは受けたともいえる。一方のチャンピオンも、同様にクリンチからの反則で減点1点を受けている。それほど肉弾戦だったともいえるのではないか。後半戦の8ラウンドあたりからは二人とも疲労が激しく、結構足元もふらついていた。お互いに低い姿勢をとって頭をつけるように接近して打ち合っていたから、クリンチというよりヘッドロックのような格好になったのも当然だったのかもしれない。しかもヘッドロック気味の抱え込みは、むしろチャンピオンのほうが先に目立っていたのだ。
 今回の問題は、選手だけでなくセコンドについた父親の史郎トレーナーや長兄の弘毅選手の反則を促すような助言がリングサイドのマイクを通して収録されており、これがさらにバッシングの炎に油を注ぐ結果になった。ボクシング好きの筆者にとって、この反則誘導の過激発言をはじめ亀田家のボクシングスタイルは好ましいものではない。リング外での発言も品がないし、好きではない。しかし、彼ら自身はずっとこのスタイルでやってきて、人気者になってメディアも煽り立ててきたのではないか。その結果として、亀田ボクシング登場以来、日本の格闘技の中では興行的に比較的地味だったボクシングが注目されたことは事実だろう。彼らがボクシング業界ひいては情報産業としてのメディアに与えた経済効果を測定したらどのくらいになるのだろうか。彼らは功労者ともいえる。その亀田現象にもっとも影響を与えてきたのが、TVメディアだったはずだ。
 15日の裁定にタイミングを合わせるように、TV各社は午前中からニュースワイド番組の中で、いっせいにこの問題を取り上げていた。コメンテイターとしてゲスト出演した元世界チャンピオンは、才能はあるがこの程度の選手は日本には沢山いる、となぜ彼だけを特別視するのか、とのニュアンスをこめて語った。しかし。これまでの新聞やTVメディアに見られた表現はどうだったのか。曰く、天才であり最強であり、今度はどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、等々期待と賞賛をこめた内容がほとんどだったのではないだろうか。もし大毅選手が勝っていたら、JBCはいったいどんな裁定を下し、メディアはどんな報道をしたのかと考える。まったく違った結果になっただろうことは間違いない。