メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

母親は強し

 毎日新聞の「ひと」欄で紹介されていたある女性の記事を見て、だいぶ昔のことだが電車の中かホームのベンチで見た微笑ましく美しい光景を思い出した。若い母親が赤ちゃんにおっぱいをあげているところだった。公共の場所で若い女性が乳房をむき出しにしていたら、ドキッとするかニヤッとするかのどちらかであろう。しかしその時は、そんな男の感情は微塵も感じなかった。女性の乳房をあんなふうに神々しくさえ感じたのは、恐らくその時だけだったろう。同時に、愛しいわが子がお腹をすかしていれば、衆人環視の中であってもためらうことなく、いや例えそれがあったとしてもあえて押しのけ、乳房を含ませることのできる母親の強さをすごいと思った。そういう母親に育てられた子供は、きっと感情の豊かないい子になるのだろうな、と思う。
 ところで件の記事は、手作り授乳服を製造販売する「モーハウス」という会社を運営する女性の記事であった。彼女は3人の子の母親であるが、10年前に電車の中で生後1ヶ月の次女が泣き止まず、ブラウスの前を開けて授乳した経験を持つという。回りで見ている人間の感じ方はとにかく、ご本人にしてみればやはり恥ずかしい経験だったようだ。ところがその後に米国製の授乳服に出会う。胸元を隠しながら他人の視線を気にすることなく授乳できる、独特のデザインだった。以来、これを基に日本人にあった手作り授乳服を開発し、製造販売を続けてきた。「授乳服が普及すれば、女性にとって働くか家庭つまり育児に専念するかだけでなく、中間の働き方も選択肢に入ってくる」との彼女のコメントが紹介されていたが、それ以上に母親とは強いものだ、と改めて感じ入った次第。と同時にこれほど子育てに腹をくくって取り組んでいる女性が、昔に比べて果たして今はどうなのだろうかと考えてしまった。恐らく減っているのではないだろうか。それは最近の子供虐待や躾の低下など、育児や子供の行動の周辺に広がる現象を見れば、残念ながら納得せざるを得ない。