メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

法律で親子の絆は決められるのか

 毎日新聞のオピニオンページ「闘論」は、タイムリーな話題について異なる立場の論客が激論を戦わせるコラムで、いつも面白く読んでいる。14日付のテーマは、離婚後妊娠を巡る300日規定だったが、あくまで法律上の建前に従う立場と、守られるべき子の権利と幸せが法が足かせとなってできていない、との指摘が真っ向からぶつかって非常に興味深いものがあった。
 前者の論陣を張るのは自民党の女性局次長・稲田朋美氏であり、後者は元郵政相・野田聖子氏であった。稲田氏は、「民法の基本は一夫一婦制にあり、婚姻中に貞操を守る義務を負うのは法律上の義務である。不貞は離婚原因とされるし、離婚前妊娠は道徳問題ではない、つまり法律上の問題なのだ」としている。一方、野田氏は「現行民法が制定された明治時代とは、社会情勢が大きく変化している現在、法が足かせとなっている。明らかに前夫が父親でないと分かっているのに、事実と異なる届出を強制するのは異常だ」と述べる。
 この問題で最も注意すべきは、子供の立場からの判断だろう。いうまでもなく当の子供には、自らの出自について選択の余地はないし、意見を述べることもできない。であればこそ、政治の場であるいはメディアで最善の解決策を目指すべきだと思うのだが、この点から二人の論理の方向性を比べてみよう。稲田氏の論は、まるで法律家のような、悪く言えば杓子定規な論調だといえよう。「自民党のプロジェクトチームで取り上げられたDNA鑑定は、血縁関係にのみ注目しており、家庭の平和や子の福祉を軽視している。戸籍についても届け出は法律的な義務であり、いったんは前夫の子として届け出た後に訂正することもできる。その間の事情は成長後に説明すれば子供は分かってくれる」と述べる。野田氏は「戸籍のない子供について、親が届け出ていないだけだとの指摘は当たらない。貞操義務とは本来、愛する相手に対して向けるべきもので、それを法律論として持ち出すのは幼稚な発想だ。いったんは前夫の戸籍に入れる方法があるといっても子供に血筋の選択権が与えられていない以上、実際とは違う人間を父として手続きしろというのはまさに人権侵害だ」と断ずる。
 こうした論争の根拠については、お二人のプロフィールを拝見して納得した。ともに衆院議員でありながら、稲田氏はご夫妻揃って弁護士。一方の野田氏は、以前に鶴保参院議員との事実婚が発覚、さらに最近それを解消したという、良くも悪くも現代を象徴する経歴の持ち主である。筆者の勝手な独断によれば、稲田氏は法律家としての枠組みの中から社会を論じているし、野田氏は男と女の触れあいの中から愛情が、さらに子供が産まれ、だからこそ人間としての情を意識しながらの発言になっているといえるのではないか。