メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

韓国・盧 武鉉大統領の驚くべき不見識

 このほど中国を議長国として開催された、北朝鮮の核保有問題を規制するための6カ国協議は、特に日本にとっては拉致問題北朝鮮誘拐事件問題の解決を諮るための会議でもあり、その点では見るべき収穫はなかったといえる。その原因のひとつが、韓国の融和政策であるが、特にこのところの韓国の北への温和姿勢=太陽政策には首を傾げたくなる。そこへ追い討ちをかけるように最高責任者である盧 武鉉大統領のとんでもない発言が報道された。読売新聞の外報によれば、イタリア訪問中の同大統領が、6カ国協議の共同文書に盛り込まれた対北朝鮮支援について「韓国は北が欲しいだけ与えて問題を解決すべき。それは儲かる商売だ」という趣旨の発言をしたという。さらに韓国が北に貢ぎすぎるとの批判に対しては、第二次大戦後の欧州復興策であるアメリカのマーシャルプランを引き合いに出して、アメリカは莫大な援助を行ったためにその利益をもっとも多く得ている、とも述べたという。同日付の毎日新聞は、昨年10月の世論調査では北への融和姿勢への批判的な声が80%近くを占めたが、多くの韓国民には本来、融和政策を支持する傾向があるのだと指摘している。背景にあるのは、北への好意ではなく、緊張が高まることは韓国経済に悪影響を与えるとの国民感情のようだ。今月27日から平壌で開催される予定の南北閣僚級会談では、韓国は北に向けて米や肥料の大規模支援を決める可能性もあり、その延長線上に見えるのは両国の首脳会談だ。年内開催についての直近の調査では、反対35%に対して賛成42%を示している。
 こうした背景を踏まえての今回の大統領発言である。12月には大統領選挙がある。韓国世論の方向性を気にしつつ、世論のお気に入りを視野に入れての発言とすればなんとも情けない。北からの脅威をもっとも気にすべきは、拉致問題の被害者国である日本を除けば韓国であるはずなのだが、その最高責任者がこうした発言をするようでは、せっかくの6カ国協議の足並みが揃わないのもむべなるかなである。それにしても、昨年10月の世論調査からわずか半年足らずでこうも変貌してしまう韓国世論とはいったいなんなのだろうか。その背景にあるメカニズムとは? その辺を知りたいのだが、納得できる情報はまだメディアからは見えてこない。かの大統領発言についても、こう言いましたとの事象を報じているだけで、論評は見えない。