メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

日本文化に自信を持とう

 ヘルシー志向や独特の高級感のせいもあってか、欧米で日本食がブームとなって久しい。特にアメリカでは、日本からの進出だけでなく、現地資本による和食レストランもずいぶんと増えているらしい。こうした事情を背景に、14日付けの読売新聞に面白いニューヨーク発外電が紹介されていた。訪米中の松岡農水相が13日、現地で記者団との会見に臨んで述べた言葉だ。農水省では、今年から海外の日本料理店に対して「優良店支援制度」を始めることになっているが、これについて日本人以外が経営する店を排除することになるのではないか、との懸念が海外特にアメリカで取り沙汰されていることを受けてのコメントであった。ボイス・オブ・アメリカなどメディアの一部には、日本が日本食の改善を目指して何と「スシ・ポリス」を送り込んでくると騒いでいる向きもあるようだ。農水省によれば、本来「優良店支援制度」は、海外の日本料理店を対象に正統な調理法や接客に取り組んでいる店に対して日本政府がお墨付きを与え、正しい(日本の)食文化の普及を図ろうというもの。
 アメリカでは、日本人ではなく中国人や韓国人が経営する日本食レストランも少なくない。正統な本来の日本メニューではないが、カリフォルニア・ロール(カロフォル二ア巻き)と言う回転寿司で少し前から登場しているメニューもあり、これなどアメリカでの反発の根拠になっているのだというが、果たして実際はどうだろう。知識としては知ってはいるが、注文したことのある人は少数派だと思うのだが。あるいは筆者が流行に後れているのだろうか。とまれ、日本の食文化の伝統はメニューだけの問題ではない。日本食は、まず生で食す、次いで焼く、蒸す、揚げる、炒める、和える、茹でる、などなど旬のものを食する調理法は実にバラエティに富んでいる。かねがね、世界で最も調理法の幅の広いのは、我が日本食であろうと自負していたのであるが、それだけではない。四季折々の食事シーンに合わせて食前の突合せや、例えば暑い季節には冷たいお茶を用意し、寒い時期には熱くして出す。食事の前に清潔なお絞りで手を拭うことで、気持ちよく食事を始められる、など細かい点にも気を配ることがすべて和食の伝統の精神なのである。日本の食材を使ったから伝統の日本食なのではない。こうした細かいところまでしっかり眼を配ることで、伝統文化を守ろうすることこそ、農水省が目指そうとしたものであったのだろう。確かにそうなると、日本人の心を持った経営でないとお墨付きは得るのは難しいのかもしれない。そういう高いハードルを設けることで、自国の文化を守ろうとする行為は、別にちっとも遠慮することではないだろう。