メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

世界では通用しない中国の文化感覚

 今週発売の週刊アスキーで面白い記事を発見した。中国ではコピーデザインが当たり前で、著作権侵害などという概念自体がないのではないか、とはよく指摘されることである。しかし、こんな意外なところにまで盗用がまかり通るとは、何をかいわんや。中国はデザイン文化に関しては、まさに世界の三流国であることを自ら示した、とんでもない記事だった。昨年11月に蘇州で開かれた「第2回健康都市連合大会」と題する政府主催の公式行事で、宣伝用の横断幕に使われた写真デザインが盗用したものだったという。しかもあろうことか、そのデザインに登場したキュートな看護婦さんは、日本のAV女優だった。何も看護婦さんの写真モデルにAV女優を起用するのがけしからんというのではない。政府主催の重要な国際会議、しかも健康な都市の育成を牽引することを目指す大会に使用する横断幕というきわめて公共性の高いデザインに、そんなに簡単に盗用行為を行って平気な彼の国のメンタリティに驚いてしまう。そのデザインは、女優の主演ビデオのパッケージ写真を盗用したのである。
 デザインといえば、自動車やバイクのコピー商品がまかり通るのも中国ではもはや常識のようになっている。昨年11月に開催された北京モーターショーでも、デザインが極めて似ていると国内メーカーがクレームをつけて、該当するいくつかの製品の出展を差し止めようとの動きがあった。そのときのショー会場内での取材映像で、思わず「そりゃア勘違いも甚だしいだろう!」と言いたくなるような光景が放映された。ある中国メーカーのブースで担当員が、「今、中国はモータリゼーションが急加速している。あと5年もすれば我々は日本を追い越し、世界に通用する車作りができる」と得意満面に語っていたのだ。中国におけるモノ作りのメンタリティは、この程度なのだ。クルマは、ヨーロッパとアメリカでは異なる発達の仕方をし、どちらかといえば日本のクルマつくりはヨーロッパを目指してきた。そこで学んだことはテイストのあるクルマ作りだ。クルマは、単に速く走って燃費がよくて、乗り心地がよければいいというものではない。もちろんデザインのすばらしさも重要な要素であるが、それは見た目だけの問題ではない。例えばドアの開閉の感覚や音にまで気を配って微妙なバランスを追求することが、クルマ作りにおける文化なのである。エンジン設計や燃費、見た目のデザインなど表面的には確かに中国の車はあるレベルには達しているのだろう。しかし、それはいまだに文化のレベルには達していないはずだ。日本が、何十年もかかって達成した境地にたかだか10年かそこらでたどり着けるはずはないのである。そんなことも知らずに、モーターショーの会場での発言。それ自体が、すでに中国にはまだ本当の文化が根付いていないことの証左なのである。