メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

何かがマヒしているTV報道の体質


19日(日)から再開される宝塚線の運行を前に、18日(土)にJR西日本が、遺族への説明会を開いたが、その席上でとんでもないハプニングがあった。何とTV局の報道カメラに代わって、遺族の女性の一人がビデオカメラマンを買って出たのだ。その女性は、カメラを朝日放送TVから預かって撮影したあとに渡すことになっていたのだという。半ば当たり前のようになっているTVのヤラセだが、こうしたニュース報道でもかと思うと、さすがにびっくりする。しかも素人の女性にカメラを預けてまで撮影させた。本来TVカメラマンは、撮る必要があればどんなに顰蹙を買おうが、罵られようが撮ってくる。プロの仕事なのだ。それを素人の、しかも事故の遺族に頼んだのだ。引き受けるほうもどうかと思うが、朝日放送の報道は、とうとう素人にヤラセるところまで落ちたのかとがっかりする。

JR側では遺族からの「写真や映像を撮られたくない」との要望を受けて、マスコミ各社に対して取材の自粛を申し入れていた。この出来事で、結局説明会は他の遺族から苦情が出て会場内が混乱したこともあり、予定よりも1時間ほど早く切り上げられた。JR西日本や会場内にいた関係者の話では、説明会が始まる前に、女性から撮影するのはJR側の出席者だけと釈明があり、そのうえで撮り始めたという。しかし実際には遺族たちの後姿も撮影されており、カメラは紛糾して閉会した後に局側に手渡された。同日夕方から深夜にかけての全国放送(TB朝日系列)とローカル放送でニュースの時間帯に計3回放送された。

そんなことまでして放送したかったのか。疑問の残る出来事だ。取材をシャットアウトして欲しい、との遺族の気持ちは理解できる。だからこそ他のメディアは、自粛したわけだ。とんでもない抜け駆けなのだが、よりによって遺族にカメラマン役を依頼するとは。説明会の後で遺族からはテープを回収するようJR側に要望も出されたが、その願いは無視されたのだろう。JRからは、朝日放送に対して今後映像は使わないように申し入れがされた。対する朝日放送のコメントは「説明会は運行再開を巡って紛糾が予想された。非公開の中でどのようなやり取りがあったのか事実を伝えるべきだと判断した」というものだったが、今回の件をどこの誰が発案して女性に依頼したのか、女性カメラマンへの謝礼はあったのか、あればいくらだったのか、カメラと撮影後のテープの授受など、具体的なポイントはもちろん何も回答は得られていない。

今回の件を聞いて他の局はどう思っているのだろうか。「ちきしょー巧くやったな」などとは決して思ってはいないと願ってはいるのだが、さて。