メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

メディアは気まぐれ

 このところライブドアVSフジTVのニッポン放送株式取得を巡る攻防が、連日メディアを賑わしている。その論調で圧倒的に目に付くのが、ライブドア堀江社長のやり方が胡散臭いというものだ。わずか数ヶ月前には、プロ野球への参入や地方競馬への経営参加などで好感を込めて「ホリエモン」とのニックネームを流布したはずのマスメディアが、今やほとんど堀江バッシングと化している。こうしたメディアの論調に乗っかる形で、あのシンキロウと呼ばれたかつての首相はじめ政治家たちもこぞって、金の力で何でもできるというのはいかがなものか、としたり顔をする。自分たちが議員年金や政治献金を巡ってそれこそ美味い汁をすすり、あるいは法を犯してまで金を集めようとしていることは棚に上げてしまう。また代議士といえば権力を振るうのが当たり前、と認識している輩も少なくない。

 こうしたバッシングにもかかわらず、このところ堀江氏のメディアでの露出は毎日のように目に付く。ほとんどは「不透明」「正体不明」「何をやろうとしているのか?」などの論調で、特にTVは、本人を囲んで評論家やら訳知り顔のキャスターが吊るし上げ状態。ほんの数ヶ月でこの変身、というよりは変節振りはどうだ?! 確かに、彼の行動や経営者としての戦略には理解しがたいことが多い。しかし、先の近鉄買収に始まる一連のプロ野球参入騒動から高崎競馬への参入など、不成功に終わったアクションを支える彼の行動計画の内容はもともと不透明さで覆われていたのではないか。本当に事業として成功するための戦術はどの程度用意されていたのか、いまだに正確には伝えられていない。にもかかわらず、当時はIT業界の風雲児との評価で、連日メディアの人気者だったはず。当時からすでに経営の方向性が具体的に見えてこない、といった指摘はほとんどなかったようだ。まさに我が国メディアの、一斉に同じ風向きで世論を思いつくままに制御しようとする特性が現れている。

 TV、雑誌と新聞との扱い方に少々違いが見えて、これはメディアの特性を感じさせる。新聞はあくまで事実の推移を客観的に報道する姿勢が見えるが、雑誌とTVは違う。雑誌はもともとセンセーショナルなスタイルが得意だから仕方ないが、なんとも節操のなさが情けないのはTV。特に純粋報道ではなく、情報バラエティ、特別報道系のトーク番組にこの色合いが強い。先だってのTBS・TV、昼の情報バラエティ「とってもインサイト」では、なんと言う名前だったか忘れたがコメンテーターを務めた評論家氏が、人気だった頃の堀江氏の行動と今回の行動を比較して、あれやこれやをあげつらってほとんど非難していたが、まったくおかしい。特に非難の対象は、あの早朝の2時間差を使った時間外取引に向けられているようだが、この行動で堀江氏は何か法律違反を犯したのだろうか。そんなことより、我々が知りたいのは今回の一連の行動の目的、彼が何を実現しようとしているのか、成功の先には何を見ているのか、どうしたら成功するのか、といったことだ。彼が非難されるとすれば、今回の一件が失敗に終わり会社を危うくして100人以上いる社員を路頭に迷わせることになったときだろう。彼は先だっての記者会見で、人生を賭けているのだと表明している。しかし、彼は多くの人間に責任を負うべき経営者であり、個人の投機家ではない。くれぐれも戦い済んで夢砕けて、とならないように踏ん張ってもらいたいものだ。