メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

身の上相談の読み方

以前にも書いたが、新聞の身の上相談の欄が面白い。中には結構深刻な相談もあるが、所詮他人事だから、と安心して読んでいられる。自分が相談員になった気分で、紙上とは違った回答を用意して、読み比べてみて自分のほうが的を得ているなどと一人悦に入ってみるなどの楽しみもあるのがその要因だろう。こんな批判的な読み方をしていると気がつくのは、回答コメントの書き方にずいぶんと差があること。相談者にしてみれば、早く回答を読みたいし、自分のためにたくさんの言葉を費やしてくれたことに手応えを感じたいのではないだろうか。どの新聞でも解答欄の文字数は決して多くはない。読売新聞の場合は、12字×38行だから456文字ということになる。他紙も大体同じようなものだろう。こうした限られた文字数の中で、相談者あるいは読者が納得するような回答を書かねばならないのだから、回答者の苦労はそれなりにあるだろう。

しかし、どうも回答の中身がどのように優れているかでいえば、精神科医やカウンセラーのような専門家よりもむしろ素人のエッセイスト、作家、映画監督といった立場の人たちのほうが一歩リードしているような気がする。というより、専門家の回答で往々にして気になるのは、すぐに回答の本論に入らないことだ。冒頭の5,6行で「あなたは相談は、こうしてこうなって、だからこういうことを相談したいのですね」と相談者のサマリーを書く。しかもそういう回答に限って、結論は「お近くの精神科医に相談したらどうですか、とか、やはり専門の弁護士に聞いてみたらいいでしょう」などとなっている。それなら新聞なんかに投書しないよ、との声が聞こえてきそうだ。その点、素人回答者のほうが点数が高いのは、彼らが人生の達人だからだろう。専門家の回答文書がややもすると学術的な香りがするのに比べると、達人の回答は時に辛辣でさえある。しかし人間としての本音が感じられ、そこに読者は手応えを感じるのだろう。