メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

ローマ字表記にも垣間見える役所のやる気のなさ

 以前に人名漢字についての役所の判断のいい加減さを述べたが、実は漢字だけではないようだ。今日の読売新聞の投書欄「気流」にローマ字の人名表記についての疑問が紹介されていた。パスポートの氏名はヘボン式で統一されているのだが、これには「ユー」のように伸ばして発音するいわゆる長音は認められていないという。だから例えば「ゆうじ」という名前は、「Yuji」と表記される。しかしこれでは「ゆじ」とも読めるわけで、依然として個人の象徴である名前を無視して、実際の発音や振り仮名とは異なる表記がまかり通っている。
 本来漢字は、世界でも珍しい音と意味を併せ持つ文字表記であり、特に人名では意味と発音とのバランスを親が一生懸命に考えながら命名する。〜〜ジュニアなどと名づけてそれで終わり、という西洋流の合理主義とは相容れないものがある。であれば、ローマ字での表記でもせめて読みの音をなるべく正確に伝えるようにしたいと思うのは、当然の帰結だろう。ところがこのヘボン式にも唯一つ例外がある。「オウ」または「オオ」の場合、「oh」の表記が2000年4月から認められたという。その結果「小野」と「大野」の区別はつくようになった。全国の小野さんと大野さんは、ホッとしていることだろう。ところが音に正確な長音表記はこれだけ。パスポートを管轄する外務省に確認したところでは、「oh」にだけ長音表記を認める理由が「ohに対する要望が多かったから」だという。何と、またもやである。その他の香田・幸田(こうだ)さんや雄介(ゆうすけ)さんなどなど、数え上げたらきりがないほどの長音名前の人々は、漢字文化への意識が低いお役所を目覚めさせるために、今度は文部省や法務省だけでなく外務省に対しても、意見をぶつけていかなければならない。この国の役所は、何と手間のかかることが好きなのだろうか。