メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

若者よ 自分の足で歩け!

 新聞記事の中で人生相談欄は、比較的購読率の高い部分ではないだろうか。悩み事であったり、進路相談であったりとテーマはさまざまだが、共通するのは所詮他人事だという安心感の上に立つ覗き見的な好奇心だ。だから新聞だけでなく、TVでもラジオでも昔から変わらないコンテンツのひとつになっている。さらにもうひとつ理由があるとすれば、それは相談者の言葉の裏に“時代”が垣間見えることだろう。
 こんな20代の学生からの投書があった。「調理師を目指して専門学校に通っている。勉強のために家での調理実習や、パソコンも必要である。親はそのことを知っているのに台所は汚れていて、とても実習をする気になれない。パソコンも一向に買ってくれる気配もない。もはや限界だが、家を出るにしても資金はない。自分の親は何を考えているのか。こんなことなら進学なんかしなければよかったのか。」と、いった按配だ。

 私の感想は、「口をあんぐり、ふ〜んと溜息」だった。全部とはいわないが、今の20代くらいの若い世代はおおむねこんな風に人生を受け止めているのだろうか、と心配にもなった。しかし、と思う。自分の次男坊は22才で料亭に修行に出ている。毎日朝早くからの仕込みで、お客が帰ったあとには後片付けと次の日の準備がある。平均すると15時間くらいはほとんど立ちずくめで仕事をする。しかもまだ下っ端だから、何十キロもある米を運んだり、生簀から採った魚を氷の入った水桶で運ぶような仕事をやらされる。特に今年の夏は暑かったそうで調理場は50度にもなるという。これからは逆に寒い冬に向かうと、あかぎれで真っ赤になった手での水仕事が待っている。それでも、週に一度帰ってくると今度はこんなことを教えてもらった、だんなさんとこんな話をした、などと報告してくれる。きついことは確かだが面白さもたくさんあるのだという。彼にとっては苦しさや厳しさの中から毎日さまざまな発見をしていて、それが楽しみになっているらしい。

 さて件の投稿を担当したのは、私の好きな回答者の1人である作家の出久根達郎氏であった。氏はおそらく私と同じように口をあんぐりとさせながら、しかしその“あきれ”を抑えて行きつけの大衆酒場で働く調理師さんの例をひきながら、とても優しく諭しておられた。パソコンだって、相当ヘビーな使い方をしない限りは、今はモニターをつけても7万円くらいで手に入る。月賦にすれば月々は6千円くらいだ。親を待たずに自分で買えばいい。そんなことすらも親のせいにしてしまう、今の20代。
 会社の中でも、何か仕事を依頼するとまず返ってくるのが、できない理由、その仕事の困難と思しき背景をあげつらう言葉だ。不安を感じても、とりあえず分かりました、と言ってまずやってみる。そして難しかったら臆せず申し出て、上司なり先輩に支援を仰ぐ。そういう発想がないのだ。昨今の若者気質を評して、傷つくことを避けたがる、との意見があるが、失敗はかっこ悪いからこれもできれば避けた方がいい、と考えるのだろう。若者よもっと冒険をしようではないか! そのためには我々おじさん達も失敗を恐れずチャレンジしてみよう。