メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

 シュレッダー事故の語られない裏側

 先のパロマ製湯沸し器の死亡事故に続く、家庭用シュレッダーで幼子が指を切断するという事故では、「またもやメーカーの責任か?」といった論調の報道ばかりが目に付く。しかし、湯沸かし器事故と今回のシュレッダー事故は同じ土俵で論じてもいいものだろうか。企業側の責任追及は、たしかに大衆受けするし、正義の御旗を振りかざすのはマスコミの常である。取材し、書くほうも気持ちは良いだろう。その影響で売り場からいっせいにシュレッダーが姿を消したりすれば、また社会の関心の高さを象徴する出来事として報道の対象になる。

 湯沸かし器事故では、当初のメーカーの対応と、さまざまな新事実が表面化するにつれて変化するその後の対応とを比較して、各方面から批判が噴出した。こうしたメーカー対応のまずさを考えると、厳しい視線が寄せられたことも止むを得ないことであったろう。しかし、今回のシュレッダー事故に関しては、被害者が子供だったことも後押ししてか、のっけからメーカーは何をしていたのか、欠陥品ではないのか、といった論調ばかり。挙句は、事故を起こしたメーカー以外の製品まで量販店などの店頭から消えるに及んで、そうだシュレッダーは危険なのかもしれない、とばかりにこれも連日の報道となった。

 少し考えてみよう。シュレッダーとは、紙を挿入すると、自動的にスイッチが入ってカッターが回り、紙を断裁する仕掛けだ。ある程度の枚数までは問題なくカットするよう、切れ味の鋭い刃が装着されている。また、いっぺんに何枚かをカットするために、差し込み口の幅も、ある程度は開いている。ただし、この開口部の幅は大人の指なら差し込めないくらいの狭さだ。つまり本来、シュレッダーというのはある程度要素を含んだ機械なのだ。何故そんな危険なものを売るのか。それはもともとオフィスという大人の空間でしか使われないものだったからだ。オフィスには子供はいない。したがって差し込み口に指を入れるという危険な振る舞いをする心配もなかった。ところが便利なものだし、個人情報保護法の影響もあるのか、家庭用の機械が売られるようになった。家庭には、もちろん子供も赤ちゃんもいる。新しい機械に不慣れな年寄りもいる。差し込み口から指を入れてしまう可能性は、オフィスで使うよりもはるかに大きなものになったのである。しかしこの辺はメーカーも当然想定していたはずだ。だからこそ業務用に比べれば、家庭用は裁断用の刃も紙の差し込み口の幅も危険性の低い作りになっていた。しかし、事故は起こってしまった。何故か?親の眼の届かないところで子供が一人で触ったからである。もう一度確認しよう。シュレッダーは一定の危険性を持った機械だ。であれば、家庭で使う際には管理体制が会社内以上にシビアであるべきだった。今回の何件かの事故は、それぞれの事故発生の家庭でどんな所に置いていたのか。使わないときは子供の手の届かない高い所に置いていたのだろうか、あるいは電源や電池を抜いていたろうか、戸棚の中などにしまっておいただろうか。この辺を考察した報道は見当たらなかったように思うのだが。