メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

イラクにおける自衛隊の実績とは

27日付の讀賣新聞紙面で「イラク支援、継続か撤収か」と題する論評が掲載された。他のマスメディアでも、このところ陸上自衛隊の活動期間が12月に切れるのを前にして派遣継続か撤収かの論議が盛んだ。しかし、他の派遣軍に比べて自衛隊の場合は、任務終了につき帰国しますと簡単に言えない事情があるようだ。もともと「まず派遣ありき」で、先のことは行ってから考えよう式の発想だったと言われている今回の自衛隊派遣だが、ここへ来てその安直発想のツケを払わなければならないかもしれない。

今年3月に撤収したオランダ軍が地元TVに語ったところでは、イラク警察とイギリス軍に治安維持を引き継いだので帰国が可能になった、といったニュアンスのコメントを発表したと言う。ところがわが陸上自衛隊は、そうは行かないようだ。というのは、自衛隊を派遣した背景に我が国だけの特殊な事情があるからだ。現在イラク国内で活動しているのは28ヶ国。日本以外は、担当する地域の警備や犯罪取り締まりなど治安維持に努めながら、イラクの新国軍や警察の育成にあたっている。しかし、わが自衛隊の任務は、道路や施設の復興、医療支援など「人道復興支援」に限定されている。一部の派遣軍は確かに復興支援も行っているが、それは治安維持を遂行するための手段としてのいわばおまけ。治安維持が目的なら、イラク軍や警察能力が一定の水準になったところで任務に一区切りつけることができる。防衛庁の幹部も「ここに来て英軍などの撤収案が浮上しているのは、権限委譲にめどがついてきているからだ」と述べているらしい。しかしわが自衛隊にとって、復興支援活動に限定するがゆえにゴールが見えないのだという。今後の構想としては、JICAをはじめとする民間移譲も視野に入れているというが、これは現状難しいだろう。

讀賣新聞の論評はまた、12月14日の「イラク復興支援特別措置法」の期限までに活動を停止し、撤収を決めたとしても大量の機材搬出には3ヶ月を要するだろうと観測している。そもそもこの期限が有効なものになるのかどうか、誰が判断するのか。放置すれば、このままどこの国の派遣軍よりもはるかに長期間駐留することにもなりかねない。論評は次のように結んでいる。「2年前、政府は国内反対派を納得させるため、武器使用を前提とする治安維持活動ではなく、イラクの人々のための人道復興支援という聞こえのいい説明で派遣した。しかし、活動から1年9ヶ月を経てなお、自衛手に何をどこまでやらせるのか聞こえてこない。」
これに加えるべきは、自衛隊イラクに行ってから現在までの成果を具体的に報道することだ。この点、一部の映像マスコミで散見する他はほとんど国内への情報が見られない。このままでは現地の自衛隊員が可哀想だ。いっそのことフリージャーナリストでもいいから、サマワに常駐してブログで自衛隊日記でも立ち上げてくれたらと思う。橋田さんがご存命なら、これは期待できたろうにと思う。