メディアの隙間から

10数年にわたるPRマン時代の感性をベースに、メディアに日々接する中で感じた??を徒然なるままにつぶやく。2020年末に本当に久しぶりに再開

矛盾を感じさせない細やかさと論理を

 社説と1面コラムとは、ともに新聞における最も重要な顔である。コラムは時にユーモアや風刺あるいは幾分の感傷をもって書かれることもあり、それが執筆者の個性にもなっている。対して社説は、その新聞の拠って立つ根幹を示すものだ。だからこそ同じ事件や社会現象を取り上げるとき、社説によってその新聞は右だとか左だとか論評もされる。各社とも論説委員会において十分意見交換をしたうえで担当者が全社を担って筆を執る。そこにはゆるぎない信念と論理がなければならない。

 11月2日付の読売新聞社説「宿営地着弾」は、最近発覚したイラクサマワ陸上自衛隊宿営地の中でロケット弾が着弾したことを取り上げている。自衛隊施設の被弾は初めてであり、今後さらなる安全策を講じる必要性があると説く。さらに先の香田さんの拘束、殺害にも触れ、来年1月の国民議会選挙をにらんで武装勢力がテロ行為を一層激化させる危険性を指摘している。これはもちろん当然の事実でなんら問題はない。問題はその後だ。
 先の人質殺害事件に関して、「小泉首相が脅迫に屈して自衛隊を撤退させることはない、と明言した。政府、与党は無論、民主党も同じ考えを表明している。」と述べている。この意味するところは、民主党自衛隊をテロの影響で撤退はさせない、との意味だろう。他に解釈はない、と思う。ところが続く文脈の中で、こう述べる「民主党岡田代表らは、陸自宿営地のサマワ周辺では『戦闘地域』『非戦闘地域』が峻別できないとして、自衛隊の撤収を求めている。自衛隊の派遣期限は12月14日で切れるが、期限延長は認めない、としている。」??である。

 民主党としては、撤退反対だが、岡田党首は徹底させろといっている、という意味なのか? だとすると民主党は意見分裂を起こしているのか、と言わざるを得ない。あるいは、テロに屈しての撤退はないが、もともと戦場への派遣ではないはずだからテロなんかに関係なく撤退させるべきだ、と言っているのだろうか。いずれにせよ、こんな短い文脈の中で、こうも鮮やかに矛盾する表現をされると、何を言いたいのか?論点はどこに?と思わず考え込んでしまう。矛盾ではない民主党に関する論点はこうだ、と言い切れるなら、この一見矛盾する論理の隙間を生める言葉が足りないのではないだろうか。